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東京地方裁判所 昭和43年(借チ)2008号・昭43年(借チ)2051号・昭43年(借チ)2042号・昭43年(借チ)2001号 決定

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

〔決定理由〕一、申立人甲は、別紙目録(一)の(1)(2)の土地につき相手方乙との間に、同(一)の(3)の土地につき丙との間に、それぞれ普通建物の所有を目的とする賃借権を有するものとして、右両名を相手方とし右賃借権譲渡の許可を求める申立をしたところ、相手方乙から右賃借権及び地上建物を自ら買受ける旨の申立がなされた。

二、そこで、右譲受申立について判断すべきであるが、本件においてまずその許否について考慮すべき点があるので、以下これについて考察する。

(1) 本件の資料によると、次の事実が認められる。

別紙目録(一)の各土地は、もと相手方乙の父の所有に属し、申立人甲は昭和二六年一月二六日同人から右土地のうち前記目録(一)の(1)(2)の土地を賃借してその上に同目録(二)の建物を建築するとともに、同目録(一)の(3)の土地は通路として使用することの許諾を受け、公道から居宅に至る通路として使用して来た。

同年七月二〇日与四郎は死亡し、別紙目録(一)の(1)の土地については相手方乙が相続によつてその所有権を取後した。同(2)(3)の土地(昭和四〇年四月一日までは四番の八として一筆の土地であつた)は、乙の兄弟二名が共同で相続し、その所有権を取得したが、これについてはその後右両名の死亡によりさらに相続があり、結局昭和四〇年には相手方丙(乙の弟の妻)及び乙の共有となつていたところ、同年七月二二日共有物分割により、別紙目録(一)の(2)の土地は相手方乙、同(3)の土地は相手方丙がそれぞれ単独で所有権を取得するに至つた。

かようにして、相手方丙は通路部分の所有権を取得したが、その頃から右通路は申立人甲が専用することになつたため、他の賃貸部分と同じ割合で賃料を支払うようになり、これも合わせて賃貸の目的とされ現在に至つている。なお、本件賃貸借については、当初期間の定めはなかつたが、昭和二九年中に昭和四九年六月三〇日までと定められた。

以上の事実によると、申立人甲は別紙目録(三)のとおりの賃借権を有すると認められる。もつとも、別紙目録(一)の(3)の土地は通路として使用され、この部分に建物は存しないが、右部分も建物所有のために必要であることは他の部分と異なるところがない(公道への出入という現実の利用上の必要のみならず、建築基準法等の法令に適合するためにも欠くことができない)から、これについての賃貸借も建物所有のためのものであり、借地法の適用を否定すべきではなく、このことは前述のように右部分が分筆され、その所有者従つてまた賃貸人を異にするに至つても、相違を来たさないというべきである。

(2) ところで申立人甲は、

「本件土地の賃借権及び建物の譲渡については、申立人甲において予め相手方乙の意向を確かめたところ、坪当り一万五〇〇〇円の名義書換料を支払うならば譲渡を承諾してもよいとのことであつたので、申立人甲は話を進め申立外丁との間で契約を結んだ。ところがその後になつて相手方乙は態度を変え丁への譲渡を承諾しないのでやむを得ず本件許可申立に及んだものである。かような事情がある場合、賃貸人の買受申立につき裁判がなされるのは不当であり、申立人甲の丁に対する譲渡につき許可の裁判がなされるべきである。」と主張するので、一応この点について判断する。

本件の資料によれば、申立人甲が、本件借地権の譲渡につき相手方乙の意向を確めた際、同人において申立人甲に対し、名義書換料として坪当り一万五〇〇〇円の支払いさえあれば譲渡の承諾が得られるとの期待を抱かせるような応待をしたことが認められるが、当時、具体的に譲受人も決つていず、それ程確実な話合が出来たわけではなく、その後、申立人甲の側の仲介人から名義書換料が高過ぎるという話もあり、また相手方乙において譲受人丁について不信の念を抱いたこともあつて、当事者間の協議が成立しなかつたものと認められる。

右の事実からすると、相手方乙の本件譲受申立が信義則に反する等の理由で許されないものということはできず申立人甲主張の点からこれを排斥することはできない。

(3) 次に、本件土地のうち別紙目録(一)の(1)(2)の部分の賃貸人は相手方乙であつて、この部分に建物が存在し、同(3)の部分は相手方丙が賃貸人であり、この部分は公道に至る通路であるところ、本件においては相手方乙が相手方丙の承諾を得て、地上建物とともに右三筆の土地全部についての賃借権の譲受を申立てているのである。

このように一括して使用されている土地の賃貸人が複数である場合における譲受申立の方法については必ずしも簡単でない。まず賃借権の譲受について一応考えられるのは各賃貸人がそれぞれの賃貸部分につき申立権があることである。このことには特に問題はないが、どのようにしてこれを行使すべきかが問題となる。その行使方法如何によつては制度の趣旨にそわない不当な結果を齎らすことが考えられるからである。

この場合考慮すべきことは、譲受後に賃貸人側に生ずべき権利関係と賃貸人のとつた譲受の方法によつて賃借人に不当に不利益を与えることがないかという点であろう。かような点から見ると、一般に借地の一部についてのみ譲受申立がなされた場合、賃借人は一括譲渡の目的が達せられず、不当にその利益が害され(細分による価値の減少殊に残存部分は使用価値も損われ処分しようにも買手がつかないということさえ起りうるであろう)、当事者間の利害の調和を考慮したこの制度の趣旨に背反することとなる。それ故かような一部についての申立は許すべきでなく、借地全体について賃借権譲受の申立がなされなければならないと考えられる。そして、この場合まず、各賃貸人がそれぞれ自らの賃貸部分の賃借権を譲受ける方法が考えられるが、前述の趣旨からすれば、必ずしもこの方法に限らず全部につき共同で譲受ける方法(通常建物も共同で買受けることになろう)をとることも認めて妨げないと解すべきである。その場合、いずれにしても事後の関係につき賃貸人相互間で調整が必要となるが(時には譲受後さらに権利移転の必要なこともあろう)、進んで譲受前に協議をし、その定めるところに従い、場合によりそのうちの一人が借地全体につき賃借権の譲受をすることも可能であると解するのが相当である。この点については、あるいは譲受申立権の譲渡があると考え、その許否を問題とする論議もあろうが、観念的に過ぎるであろう。一括して使用されている借地であること、譲受を認められるのが事件の当事者となつている賃貸人の一人であること、他の賃貸人の承諾のあることなどを前提としてこれを認めるとすれば、格別の弊害もなく借地当事者間の利害の適切な調和がはかられ、制度の趣旨にかなうと思われる。

本件において、主たる部分の賃貸人は相手方乙であり建物も同人の賃貸地に存するのであるから、相手方丙と協議の上、その承諾の下に乙において買受の申立をしたのはむしろ実際に適するものと考えられ、前述したところに従いその申立は適法と解される。

三、そこで次にその対価について検討する。

鑑定委員会の意見によれば、本件土地の借地権についてはその一般取引価格3.3平方米当り七万三五〇〇円(建付減価しないままのもの)、地主が買受ける場合の対価としては、これから一〇%を差引いた3.3平方米当り六万六一五〇円を相当とし、結局全体として二四七万五〇〇〇円とする。建物については、その材料も悪く、古くなつており取引の対象としては建付減価と相殺されるものとし、結局本件借地権及び建物の対価は二四七万五〇〇円を相当とするとしている。

これについて、当事者双方とも妥当なものとして、異議のないことを表明しているし、右の金額については格別に不当とする点もなく採用しうるものと考えられるので、右のとおり対価を定めることとし、借地法第九条の二第三項の規定に従い主文のとおり決定する。(安岡満彦)

目録

(一) 土地

(1) 東京都豊島区要町三丁目

宅地103.37平方米のうち78.61平方米

(2) 同町四番二〇

宅地25.17平方米(実測26.42平方米)

(3) 同町四番八

宅地27.68平方米(実測18.71平方米)

(二) 建物

東京都豊島区要町三丁目四番地所在

家屋番号同町四番一四

一、木造瓦葺平家建居宅一棟

床面積47.93平方米(14坪50)

(三) 借地権

(1) 右(一)の(1)(2)の土地を目的とし、賃貸人を乙、賃借人を甲とする賃借権

(2) 右(一)の(3)の土地を目的とし、賃貸人を丙、賃借人を甲とする賃借権

ただし、いずれも、普通建物の所有を目的とし、期間は昭和四九年六月三〇日まで。

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